国産キネマ【1】横溝正史原作、金田一耕助シリーズ
- 2007 11/03 (Sat)
今回も新カテゴリ「国産キネマ」です。簡単に言うとわが”日本映画”のことです。ここ数年、日本映画は”興行的に”好調のようです。これはまことに喜ばしい限りなのですが、一方で”日本映画アレルギー”のような発言も時々耳にすることがあります。まぁ、たしかにヒドい作品もあります。あるいは、外国の作品と比較しての感想かも知れません。
しかし、どうでしょう。外国の映画にもヒドいものもありますし、外国映画との比較で日本映画を評価することに果たして意義はあるのでしょうか。日本人の舌に合う料理があるように、日本人の感性に合う音楽があるように、日本人の感性に合う映画もきっとあるはずです。スパゲッティとそば、どちらがおいしいかなんて質問はナンゼンスです。どちらもおいしいですもん。もしそういった自分にぴったりの作品があるのに、アレルギー的な拒絶感で巡り会うことがなかったとしたら、それは不幸以外の何ものでもありません。エスニック料理なんて最初はちょっと見た目ゾッとしますよね。でも食べてみると意外にハマる。自国の、それも母国語で字幕なしに鑑賞可能な作品を無視するなんてもったいなすぎます。もし今までに観た日本映画がつまらないのばかりだったからというのが拒絶の理由なら、それはズバリ作品選びが不幸にも間違っていただけだと思うんです。
ということで、このカテゴリでは積極的に日本映画を紹介して行きたいと思います。ジャンル・時代は一切問わず、ありとあらゆるタイプの作品をご紹介していくつもりでおります。自分の価値観が変化する瞬間って、意外に快感を伴うものだったりします。このカテゴリが日本映画アレルギーの特効薬になれたらなんて思います。
今回は、1970年代に一大センセーショナルを巻き起こし、現在でも根強い人気を誇る作品、作家横溝正史のミステリー小説、探偵金田一耕助が活躍するシリーズものを紹介します。

『犬神家の一族』1976年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/高峰三枝子/三條美紀/草笛光子
実はこの金田一耕助シリーズはこの作品が初めてではなく、これ以前にも相当数の俳優が演じてきております。中には、若き日の高倉健なんて作品も。しかし、今に続く金田一耕助の人気を決定づけたのはこの市川崑監督、石坂浩二=金田一作品と言ってもいいでしょう。この『犬神家の一族』は娯楽映画としてしっかりできております。そしてなにより、ハリウッド作品からは到底得られないような、なにやら和風の雰囲気といえばいいのでしょうか、じめじめした”怨み”ですとか、日本的”因習”ですとか、そういうものが複雑に絡み合う事件の謎解きに思わず引き込まれてしまいます。外国のミステリーのように合理的な捜査方法など金田一探偵はとりません。疑わしい人物の心の奥底まで入り込み、謎を解いていきます。その謎も日本人的感性、たとえば”跡目争い”であったり”血の争い”に原因があったりします。この辺りの微妙な要素がうまく”ツボ”をついてしまったと言えるのではないかと思います。
内容もミステリアスで面白いのはもちろんなんですが、この作品が大ヒットした理由はもうひとつあります。それは、この作品の製作・宣伝形態にありました。この作品、制作は角川春樹事務所となっています。角川出版の角川春樹氏が映画制作に乗り出した第1回作品ということになります。当時の日本映画は不況のドン底にありました。外国映画の人気におされたのはもちろん、テレビの普及、娯楽の多様化など理由は複合的だったのでしょう。日活が倒産寸前に陥り路線変更を余儀なくされたのもこの頃です。そこに出版社が新しい映画製作の手法を生み出したのでした。それは、出版とのタイアップとでも言うのでしょうか、まず書店の一番目立つところに角川出版から出ている横溝正史の文庫本を大量に並べます。そして、莫大な宣伝広告費を投じてテレビなどあらゆる媒体で作品を宣伝します。その時に、インパクトのある映像があればなお効果的ですので、観た方はわかると思いますが、この作品の有名なシーンである”湖から突き出た足”のショッキングな映像を効果的に使うわけです。これにより、作品の認知度の向上を図り、あとは”映画を観るのが先か、小説を読むのが先か”という問題に観客をひきずり込むわけです。うまくいけば本もチケットも売れるという算段だったのですが、それがものの見事にハマってしまいました。現在では当たり前のような手法です。『踊る!大捜査線』のようなテレビでドラマを見せて、次は”劇場版”の流れも類似の手法と言えるのではないでしょうか。ただ残念ながら近年のこの手法による”劇場版”の質は、個人的な印象ながら観るに耐えない作品が多いような気がしますが。

『悪魔の手毬唄』1977年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/岸恵子/北公次
前作と同じスタッフ・キャストで制作された第2弾。2匹目のドジョウはいたわけです。”若き日の過ち”など触れられたくない過去が重くのしかかって、またもや”怨み”や”血の問題”が複雑に絡み合ってきます。重苦しさをなごませる石坂金田一のとぼけたキャラクター作りもこのシリーズを成功に導いた重要な要素とえいると思います。
この作品について特に強調したいことは、金田一の知人、磯川警部に扮する若山富三郎の名演です。東映の時代劇、任侠映画で一時代を築いた大俳優ですが今回のエピソードでのサイドストリーでは主役を演じます。中年の淡い恋心とでも申しましょうか、微妙な心理を抑えた演技で見事に演じ、この作品を単なる謎解きミステリー以上の傑作へと導きました。

『獄門島』1977年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/佐分利信/大原麗子/草笛光子
快進撃はまだまだ続きます。三匹目のドジョウも逃しません。内容も充実しています。ある島の名士に招かれた金田一耕助がその島、獄門島でまたもや大活躍。”複雑な家族関係”、”血の問題”が謎解きのヒントになります。日本のような歴史のある国では、良くも悪くもある程度身近にこのような問題が潜んでいるものです。その辺りをうまく取り込んで、観るものをひきつけて離しません。まさに日本人だからこそわかるテーマを扱った作品と言えると思います。戦後の大俳優、佐分利信の重厚さも作品にさらなる重みを与えているのも見逃せません。

『女王蜂』1978年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/高峰三枝子/司葉子/岸恵子/仲代達矢
シリーズ第4弾。正直なところ、若干マンネリ感も出てこないわけではありませんが、まだまだいけます。だんだん一番の美人女優さんが犯人だってパターンがバレてきちゃったりも。いかにも怪しい人は犯人じゃないってパターンも。妖しい雰囲気作りはやはり成功しています。第1作『犬神家の一族』に続いて、大女優高峰三枝子の存在感が光ります。

『病院坂の首縊りの家』1979年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/佐久間良子/桜田淳子
シリーズ第5弾。この作品でシリーズは一段落します。この作品はこれまでと違い、町が舞台になります。これまでは田舎の名家で起こるミステリーでしたので、その地方ならではの風習など雰囲気づくりの要素は事欠きませんでしたが、この作品はそういった意味で若干弱い部分があるようにも思えます。また、登場人物の血縁関係が若干複雑すぎ最後まで誰と誰がどういう関係かわからなかったり。しかし、それでもなおこのシリーズの持つ独特の魅力は失われることはありません。
この市川=石坂金田一シリーズは、当時の日本映画の低迷に合わせるように低迷していた市川 崑 監督の代表作にもなりました。遊び心のあるショット、ミステリーを深める編集、そして三木のり平、草笛光子など重厚な脇役人の場を和ませるコミカルな演技など、文芸大作中心に活躍してきた市川監督に肩の力の抜けた新たな一面をもたらしたと言えるシリーズとなりました。

【表紙】 【裏表紙】
『八つ墓村』1977年/松竹映画
監督:野村芳太郎
出演:渥美清/萩原健一/小川真由美/山崎努
これは『犬神家の一族』のヒットと同時期に松竹でつくられた別系統の作品。監督は『砂の器』の野村芳太郎で、黒澤明の盟友にして『砂の器』の脚本もてがけた橋本忍コンビで作られました。金田一耕助役は、松竹の看板スター”寅さん”渥美清のまさかの起用。角川映画に対抗してCMで流された宣伝文句『たたりじゃぁ?』も大ブレイクし、小学生はこのセリフを絶叫しながらおいかけっこをしてました。石坂金田一にはおよびませんが、この渥美金田一も悪くはありません。”寅さん”にしては若干真面目すぎるかなぁという印象です。というよりも、金田一耕助は調査のため出張ばかりであんまり出てこなっかたり。衣装も普通のラフな格好ですので、キャラクター設定の点では市川石坂=金田一の後塵をはいしたと言えるでしょう。全体的な雰囲気も石坂金田一に比べ暗めです。

『金田一耕助の冒険』1979年/東映映画
監督:大林宣彦
出演:古谷一行/田中邦衛/吉田日出子
これまた別系統の作品。古谷一行金田一は、TVでおなじみではあります。制作規模が小さいのでこれまでの作品とはひと味違うものになっています。監督は当時売り出し中だった大林宣彦。

『悪霊島』1981年/東映=日本ヘラルド
監督:篠田正浩
出演:加賀丈史/室田日出雄/古尾谷雅人/岸本加世子
この作品、東映制作となっていますが制作には角川書店が絡んでおます。ということは、制作会社とスタッフ・キャストを総入れ替えした実質的な市川石坂金田一の後継作と言えるかも知れません。”土地転がし”ならぬ”映画転がし”か。今作はかつて大島渚、吉田喜重らと”松竹ヌーベルバーグ”の一翼を担った篠田正浩作品。全編にビートルズの作品が流れますが、この版権使用料に製作費の相当額が割こうとしたとか。篠田監督は優れた監督で素晴らしい作品を多数撮っていますが、このビートルズは頂けません。ビートルズを使う必然性が全く伝わってきません。ただし、加賀金田一も悪くはありませんし、作品も市川崑金田一ののほほんとしたコミカルな雰囲気を結果的に踏襲したような出来ですので十分楽しめます。『獄門島』に続き、佐分利信が出演。ただ、前作ほどの存在感はありません。加賀金田一は宿帳を盗み見しようとして見つかっちゃったり、石坂金田一より多少ドジな面があります。
この後、さらに東宝で市川崑監督が1996年に『八つ墓村』を豊川悦司=金田一耕助で撮ったり、はたまたつい最近にいたっては『犬神家の一族』を前作とまったく同じ市川監督、石坂金田一で再映画化したり、このシリーズには若干の迷走もみられます。純粋な映画人からすると、角川映画の手法は批判もあったと思います。角川春樹氏はその後も映画製作を続け様々なトラブルを起こしながらも、ここ数年でも『男たちの大和』など話題を振りまき続けています。とにもかくにも、この一連の作品群は日本映画ならではの作品であり、現在でも一見の価値のある作品であると思います。

『犬神家の一族』【2005年版】東宝映画
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DVD『悪魔の手毬唄』
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DVD『犬神家の一族』1976年版
DVD『犬神家の一族』2006年版
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しかし、どうでしょう。外国の映画にもヒドいものもありますし、外国映画との比較で日本映画を評価することに果たして意義はあるのでしょうか。日本人の舌に合う料理があるように、日本人の感性に合う音楽があるように、日本人の感性に合う映画もきっとあるはずです。スパゲッティとそば、どちらがおいしいかなんて質問はナンゼンスです。どちらもおいしいですもん。もしそういった自分にぴったりの作品があるのに、アレルギー的な拒絶感で巡り会うことがなかったとしたら、それは不幸以外の何ものでもありません。エスニック料理なんて最初はちょっと見た目ゾッとしますよね。でも食べてみると意外にハマる。自国の、それも母国語で字幕なしに鑑賞可能な作品を無視するなんてもったいなすぎます。もし今までに観た日本映画がつまらないのばかりだったからというのが拒絶の理由なら、それはズバリ作品選びが不幸にも間違っていただけだと思うんです。
ということで、このカテゴリでは積極的に日本映画を紹介して行きたいと思います。ジャンル・時代は一切問わず、ありとあらゆるタイプの作品をご紹介していくつもりでおります。自分の価値観が変化する瞬間って、意外に快感を伴うものだったりします。このカテゴリが日本映画アレルギーの特効薬になれたらなんて思います。
今回は、1970年代に一大センセーショナルを巻き起こし、現在でも根強い人気を誇る作品、作家横溝正史のミステリー小説、探偵金田一耕助が活躍するシリーズものを紹介します。

『犬神家の一族』1976年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/高峰三枝子/三條美紀/草笛光子
実はこの金田一耕助シリーズはこの作品が初めてではなく、これ以前にも相当数の俳優が演じてきております。中には、若き日の高倉健なんて作品も。しかし、今に続く金田一耕助の人気を決定づけたのはこの市川崑監督、石坂浩二=金田一作品と言ってもいいでしょう。この『犬神家の一族』は娯楽映画としてしっかりできております。そしてなにより、ハリウッド作品からは到底得られないような、なにやら和風の雰囲気といえばいいのでしょうか、じめじめした”怨み”ですとか、日本的”因習”ですとか、そういうものが複雑に絡み合う事件の謎解きに思わず引き込まれてしまいます。外国のミステリーのように合理的な捜査方法など金田一探偵はとりません。疑わしい人物の心の奥底まで入り込み、謎を解いていきます。その謎も日本人的感性、たとえば”跡目争い”であったり”血の争い”に原因があったりします。この辺りの微妙な要素がうまく”ツボ”をついてしまったと言えるのではないかと思います。
内容もミステリアスで面白いのはもちろんなんですが、この作品が大ヒットした理由はもうひとつあります。それは、この作品の製作・宣伝形態にありました。この作品、制作は角川春樹事務所となっています。角川出版の角川春樹氏が映画制作に乗り出した第1回作品ということになります。当時の日本映画は不況のドン底にありました。外国映画の人気におされたのはもちろん、テレビの普及、娯楽の多様化など理由は複合的だったのでしょう。日活が倒産寸前に陥り路線変更を余儀なくされたのもこの頃です。そこに出版社が新しい映画製作の手法を生み出したのでした。それは、出版とのタイアップとでも言うのでしょうか、まず書店の一番目立つところに角川出版から出ている横溝正史の文庫本を大量に並べます。そして、莫大な宣伝広告費を投じてテレビなどあらゆる媒体で作品を宣伝します。その時に、インパクトのある映像があればなお効果的ですので、観た方はわかると思いますが、この作品の有名なシーンである”湖から突き出た足”のショッキングな映像を効果的に使うわけです。これにより、作品の認知度の向上を図り、あとは”映画を観るのが先か、小説を読むのが先か”という問題に観客をひきずり込むわけです。うまくいけば本もチケットも売れるという算段だったのですが、それがものの見事にハマってしまいました。現在では当たり前のような手法です。『踊る!大捜査線』のようなテレビでドラマを見せて、次は”劇場版”の流れも類似の手法と言えるのではないでしょうか。ただ残念ながら近年のこの手法による”劇場版”の質は、個人的な印象ながら観るに耐えない作品が多いような気がしますが。

『悪魔の手毬唄』1977年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/岸恵子/北公次
前作と同じスタッフ・キャストで制作された第2弾。2匹目のドジョウはいたわけです。”若き日の過ち”など触れられたくない過去が重くのしかかって、またもや”怨み”や”血の問題”が複雑に絡み合ってきます。重苦しさをなごませる石坂金田一のとぼけたキャラクター作りもこのシリーズを成功に導いた重要な要素とえいると思います。
この作品について特に強調したいことは、金田一の知人、磯川警部に扮する若山富三郎の名演です。東映の時代劇、任侠映画で一時代を築いた大俳優ですが今回のエピソードでのサイドストリーでは主役を演じます。中年の淡い恋心とでも申しましょうか、微妙な心理を抑えた演技で見事に演じ、この作品を単なる謎解きミステリー以上の傑作へと導きました。

『獄門島』1977年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/佐分利信/大原麗子/草笛光子
快進撃はまだまだ続きます。三匹目のドジョウも逃しません。内容も充実しています。ある島の名士に招かれた金田一耕助がその島、獄門島でまたもや大活躍。”複雑な家族関係”、”血の問題”が謎解きのヒントになります。日本のような歴史のある国では、良くも悪くもある程度身近にこのような問題が潜んでいるものです。その辺りをうまく取り込んで、観るものをひきつけて離しません。まさに日本人だからこそわかるテーマを扱った作品と言えると思います。戦後の大俳優、佐分利信の重厚さも作品にさらなる重みを与えているのも見逃せません。

『女王蜂』1978年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/高峰三枝子/司葉子/岸恵子/仲代達矢
シリーズ第4弾。正直なところ、若干マンネリ感も出てこないわけではありませんが、まだまだいけます。だんだん一番の美人女優さんが犯人だってパターンがバレてきちゃったりも。いかにも怪しい人は犯人じゃないってパターンも。妖しい雰囲気作りはやはり成功しています。第1作『犬神家の一族』に続いて、大女優高峰三枝子の存在感が光ります。

『病院坂の首縊りの家』1979年/角川映画
監督:市川崑
出演:石坂浩二/佐久間良子/桜田淳子
シリーズ第5弾。この作品でシリーズは一段落します。この作品はこれまでと違い、町が舞台になります。これまでは田舎の名家で起こるミステリーでしたので、その地方ならではの風習など雰囲気づくりの要素は事欠きませんでしたが、この作品はそういった意味で若干弱い部分があるようにも思えます。また、登場人物の血縁関係が若干複雑すぎ最後まで誰と誰がどういう関係かわからなかったり。しかし、それでもなおこのシリーズの持つ独特の魅力は失われることはありません。
この市川=石坂金田一シリーズは、当時の日本映画の低迷に合わせるように低迷していた市川 崑 監督の代表作にもなりました。遊び心のあるショット、ミステリーを深める編集、そして三木のり平、草笛光子など重厚な脇役人の場を和ませるコミカルな演技など、文芸大作中心に活躍してきた市川監督に肩の力の抜けた新たな一面をもたらしたと言えるシリーズとなりました。

【表紙】 【裏表紙】
『八つ墓村』1977年/松竹映画
監督:野村芳太郎
出演:渥美清/萩原健一/小川真由美/山崎努
これは『犬神家の一族』のヒットと同時期に松竹でつくられた別系統の作品。監督は『砂の器』の野村芳太郎で、黒澤明の盟友にして『砂の器』の脚本もてがけた橋本忍コンビで作られました。金田一耕助役は、松竹の看板スター”寅さん”渥美清のまさかの起用。角川映画に対抗してCMで流された宣伝文句『たたりじゃぁ?』も大ブレイクし、小学生はこのセリフを絶叫しながらおいかけっこをしてました。石坂金田一にはおよびませんが、この渥美金田一も悪くはありません。”寅さん”にしては若干真面目すぎるかなぁという印象です。というよりも、金田一耕助は調査のため出張ばかりであんまり出てこなっかたり。衣装も普通のラフな格好ですので、キャラクター設定の点では市川石坂=金田一の後塵をはいしたと言えるでしょう。全体的な雰囲気も石坂金田一に比べ暗めです。

『金田一耕助の冒険』1979年/東映映画
監督:大林宣彦
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これまた別系統の作品。古谷一行金田一は、TVでおなじみではあります。制作規模が小さいのでこれまでの作品とはひと味違うものになっています。監督は当時売り出し中だった大林宣彦。

『悪霊島』1981年/東映=日本ヘラルド
監督:篠田正浩
出演:加賀丈史/室田日出雄/古尾谷雅人/岸本加世子
この作品、東映制作となっていますが制作には角川書店が絡んでおます。ということは、制作会社とスタッフ・キャストを総入れ替えした実質的な市川石坂金田一の後継作と言えるかも知れません。”土地転がし”ならぬ”映画転がし”か。今作はかつて大島渚、吉田喜重らと”松竹ヌーベルバーグ”の一翼を担った篠田正浩作品。全編にビートルズの作品が流れますが、この版権使用料に製作費の相当額が割こうとしたとか。篠田監督は優れた監督で素晴らしい作品を多数撮っていますが、このビートルズは頂けません。ビートルズを使う必然性が全く伝わってきません。ただし、加賀金田一も悪くはありませんし、作品も市川崑金田一ののほほんとしたコミカルな雰囲気を結果的に踏襲したような出来ですので十分楽しめます。『獄門島』に続き、佐分利信が出演。ただ、前作ほどの存在感はありません。加賀金田一は宿帳を盗み見しようとして見つかっちゃったり、石坂金田一より多少ドジな面があります。
この後、さらに東宝で市川崑監督が1996年に『八つ墓村』を豊川悦司=金田一耕助で撮ったり、はたまたつい最近にいたっては『犬神家の一族』を前作とまったく同じ市川監督、石坂金田一で再映画化したり、このシリーズには若干の迷走もみられます。純粋な映画人からすると、角川映画の手法は批判もあったと思います。角川春樹氏はその後も映画製作を続け様々なトラブルを起こしながらも、ここ数年でも『男たちの大和』など話題を振りまき続けています。とにもかくにも、この一連の作品群は日本映画ならではの作品であり、現在でも一見の価値のある作品であると思います。

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