サントラ至上主義【7】日本のサントラ作家 第1回
- 2011 03/26 (Sat)
普段は不満に感じることの多い日本サッカー協会、Jリーグが動いてくれました。3月29日大阪長居スタジアムにて、ザッケローニ率いる日本代表vsストイコビッチ率いるJリーグ選抜の試合がチャリティーマッチとして開催されます。
私は地震と津波による直接の被害を受けてはいない地域に住んでおりますが、計画停電が施行され、空気中と水道水中の放射能数値が普段より多少上昇している地域に住んでおります。原子力発電所の状態も非常に気になります。もちろん、直接の被害を受けた東北・北関東の方々に比べれば数段安全で普段通りの生活ができておりますので辛いとは思いません。
ただ、より多くの放射能を浴びるのではないかという不安の中で暮らす私も、この試合の決定と発表されたメンバーを見て久しぶりに心が踊りました。見たい!と心から思います。年甲斐もなく早く試合の日になってくれ!とさえ思います。ほぼアジアカップ優勝メンバ?が揃った日本代表が、中村俊輔、小野伸二、楢崎正剛、川口能活、W杯南アフリカ大会で日本のセンターを死守した中澤トゥーリオ、更には、小笠原、中村憲剛、大久保嘉人、佐藤寿人、そして何よりも三浦知良、キングカズが参加するJリーグ選抜チームと対戦してくれます。
勝敗を考えると胸が引き裂かれるような気もします。どっちも負けてほしくない。でも、本田のゴールも見たいし、カズのゴールも見たい。長友のオーバーラップからのセンタリングも見たいし、前田のゴールも見たい。が、楢崎のセーブもみたい。俊輔、小野からカズ選手へのスルーパスなんてあるんでしょうか。考えただけでも鳥肌もの。どちらのチームがゴールしても、喜びと悲しみを同時に感じる予感が・・・。
ただただ楽しみです。夢のような90分を過ごせそうです。日本サッカー発展の歴史と輝ける未来が同時に見られる試合になることを期待できそうです。試合の間は、放射能のことも忘れられる気がします。東北地方のサッカーファンの方々も、この試合を見ることができ、一瞬でも心が和むことを祈りつつ。
記者会見でのカズ選手【Yahoo!経由スポーツナビの記事】
両チーム選出メンバー一覧【スポーツナビ】
カズ選手インタビュー【Yahoo!経由SOCCER KING】
小笠原・新井場選手コメント【Yahoo!経由SOCCER KING】
長友選手コメント【Yahoo!経由読売新聞】
長谷部選手コメント【Yahoo!経由毎日新聞】
ザッケローニ監督のコメント【Yahoo!経由毎日新聞】
「日本は私の家であり、『自分は日本人だ』と感じている。」
ザック「練習よりも大切」募金活動を大幅延長【izaの記事】
正直、泣けてきました。年甲斐もなくウルっときました。
ストイコビッチ監督のコメント【Yahoo!経由スポニチ】

日本サッカー協会が義援金を募集し、日本赤十字社に全額寄付されます。
ここから本題を。
これまで、「サントラ至上主義」では、ハリウッドで活躍したオーケストレーション型のサントラ作家ばかり紹介してきました。サントラ史に名を残した作曲家を古い順に追っていくつもりでおりましたが、予定を変更し、今回は、日本のサントラ作家に焦点を当てます。
日本映画界には、古くより素晴らしいサントラ作家がいたのはご存じの通りです。溝口健二、黒澤明に楽曲を提供した早坂文雄氏。ジョン・ヒューストンの『天地創造』【1966年】を担当した黛敏郎氏。斉藤高順、武満徹、枚挙にいとまがありません。が、今回は比較的近年に活躍し、現在も活躍中の坂本龍一が担当したサントラを紹介いたします。
坂本龍一は、他の偉大なサントラ作家同様、当初よりサントラ作家を志向していた訳ではありません。1976年に東京芸大の修士号を取得したのち、スタジオ・ミュージシャンとして活動。その過程で出会った細野晴臣、高橋幸広とYMO【イエロー・マジック・オーケストラ】を結成。ほぼ同時期にソロ・アーティストとしても活動を始めます。
YMOは折からのテクノ・ブームに乗り大成功を収めます。アジアのバンドとして初めて欧米でも一定の評価を獲得するに至ります。テクノ・ポップ史/エレクトロ・ポップ史の中ではレジェンドとしてその名を刻んでいるのは言うまでもありません。ここで、いくつかYMOの代表曲を。
”東風【Tong Poo】"PVをyoutubeより。
”Solid State Survivor " 武道館1980年を。
”Rydeen”のPV。
”Technopolis”のPV。
私映パン研所長にとって、何億回聴いても飽きない永遠のグルーヴ”Computer Games”のPV。
なんでしょう、この充実感は。上掲5曲はYMOの全貌のごく一部でしかありません。Youtubeには貴重なライブ映像や音源が多数アップされております。興味のある方は是非チェックしてみてください。ちなみに今年のFUJI ROCK FESTIVALにも出演が決定しているとのことです。
上記のビデオを一本でも聴いて頂ければ、彼らがサントラにうってつけの音楽性を持っていることが解るかと。音楽の重要度が高い優れた作品があれば、彼らの資質は発揮される予感に満ちあふれております。偉大なサントラ作家の多くが、他ジャンルの作曲家/編曲家/演奏家としての活動と同時並行で活動していたか、転向してきたこと考えれば、彼らほどの能力の持ち主であればサントラ作家として仕事をするのは宿命とさえ思えます。
そして、坂本龍一にその機会がやってきます。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『戦場のメリークリスマス』1983年/イギリス=日本映画
【original title : Meryy Cristmas Mr.Lawrence】
監督:大島渚
出演:デビット・ボウイ/ビートたけし/坂本龍一/トム・コンティ/ジャック・トンプソン
説明不要のセンセーショナル作。私映画パンフレット研究所所長にとっては、ありとあらゆる面で刺激を受け続けている作品です。一体全体、何度この作品を観たでしょうか。何度このサントラを聴いたでしょうか。
私にとって初めて買ったサントラレコードがこの作品でした。セコイ自慢をするようで申し訳ないのですが、敢えて言わせて頂きたい。まずLPレコードを買いました。そして、新宿のシスコという輸入レコード店で、デビット・ボウイが磔されている場面をデザイン化したジャケット違いの輸入盤を発見し、問答無用で購入しました。私にとって、初めてのジャケ買いでした。そして、”Coda"というソロ・ピアノバージョンのカセットテープも購入しました。もちろん、CD化されても買いました。輸入盤CDも買いました。レーザーディスクも買いました。DVD化された際も買いました。ブルーレイ化されるならもちろん買います。原作本ローレンス・ヴァン・デル・ポストによる原作本「種を蒔く人」も読みました。撮影秘話を集めた本も買いました。テーマ曲のオルゴールを偶然見つけた時も買いました。要するに私は”戦メリ”バカということに。
作品としても私の映画鑑賞歴の中では最上位に来る内容ですが、今回はあくまでも”サントラ至上主義”ですので内容には触れません。
サントラについては説明不要かと。坂本龍一は琴線に触れるメロディを紡ぎます。が、涙を誘うような下世話なメロディではありません。少しづつ心に染み入るような・・・なんて言葉で語るよりもyoutubeより。
伝説的なラストシーンから、テーマ曲とエンドロール丸ごと9分半です。
全編をご覧になっていない方にはいまひとつ伝わらないとも思いますが偉大なシーンです。もうすぐ訪れる過酷な末路を待つハラ軍曹の元をかつて敵ながらも奇妙な友情を結んだロレンスが訪れます。もちろん、会話ははずみません。床に座るロレンス。彼もまた居心地の悪さを感じているのでしょう。が、哀れなハラを思うと別れの挨拶を切り出せずに、しばらくの間、あまりにも痛々しい会話を続けざるを得ません。別れを躊躇する素振りを見せます。私はこの天井からのショットを、世界映画史上最も哀しい躊躇シーンと私は孤独に認定している次第です。そして、遂に別れの時。「ロレンスっ!」とかつてのようにハラの怒鳴り声が響きます。そして、ラストカット。この最後のカットは、世界映画史上に燦然と輝くクロースアップと私は孤独に認定しているのは言うまでもありません。
もちろん、この作品の内容とラストについては多くの日本人は感情を揺さぶられたと思われますが、世界的には賛否両論を巻き起こしました。否定的な意見も多数あったとのこと。日本は悪であり、戦争犯罪者は容赦なく裁かれるべき、とする考えからするとこの内容は許せない、ということになるのでしょう。大島渚の意図を汲めば、そのような評価は表面的で浅薄と私は思いますが。
大島がデビット・ボウイ演じるセリアズの役を最初にロバート・レッドフォードにオファーしたのは有名なエピソードです。脚本をあらかじめ渡し面会に向かった大島に対しレッドフォードの答えは「ノー!」でした。「あなたのこれまでの仕事は大変尊敬しているが、この作品に出ることはできない。もし、出たらハリウッドで仕事ができなくなる」との理由でした。
そして次にオファーしたのがデビット・ボウイ。その時点で資金調達の目処が立っていないこと説明する大島に、デビット・ボウイは「この作品に出られるなら何年でも待つ!」とオファーを快諾したそうです。結果的にですが、このデビット・ボウイの起用が恐るべき成果を生んだことはご存じの通りです。彼の妖しげな魅力が、今作の”もうひとつのテーマ”を豊饒なものにしたことは言うまでもありません。レッドフォードだったらと思うと寒気がするほど。【ちなみに私はストレートですので。念のため。】
さらに余談ですが、先日、日本代表の長友選手がメルカトーレと呼ばれるサッカー選手の移籍期間ギリギリで、チェゼーナというチームからインテル・ミラノへと移籍しました。この移籍期間は1月31日で閉まるのですが、長友選手の移籍が成立したのは期間終了の数分前というタイミングでした。私はネットでこの模様を観ていたのですが、駆け込み移籍が成立した瞬間、この戦メリのテーマ曲がイタリアのTV局の番組で流れました。
少し話題が逸れましたが、サントラに話を戻します。今作にはもうひとつ忘れ得ぬ曲があります。”Sowing the Seed”をYoutubeより。
やはりご覧になってない方には訳がわからないシーンかもしません。が、もしご覧になれば、このシーンとこの曲を忘れることができなくなるはず。それほど衝撃的で忘れ得ぬシーンです。言うまでもなく、映画史上最も美しい”英国人捕虜が命令を無視して歩くシーン”です。この瞬間、登場人物たちの間にあった微妙な均衡が崩壊し、全てが変わり、多くの者達は破滅への道を辿ることに。そして怒濤のラストに向かってドラマは急速に展開していきます。
Youtubeのコメント欄をご覧になると、この作品の内容、扱ったテーマがいかに世界中で賛否の渦を巻き起こして現在に至っているか解ると思います。製作より30年近くが経過した現在でも頻繁に世界中からコメントが書き込まれております。
また、先ほど紹介したテーマ曲"Merry Christmas Mr.Lawrence"には、歌付バージョンも存在します。タイトルは"Forbidden Colors"。もちろん日本語訳すれば「禁色」。言うまでもなく、三島由紀夫の小説と同タイトル。英国のJAPANというバンドのボーカリスト、デビット・シルビアンがヴォーカルを担当しました。こちらもYoutubeより。
しばしば映画配給会社が宣伝文句として”奇跡の作品”ですとか”奇跡の共演”などと安っぽい宣伝文句を用いることがあります。思慮深い映画ファンはもはやこのような文言に騙されることはありませんが。この『戦場のメリークリスマス』という作品は、その”奇跡”という言葉を使う以外、他の表現が見あたりません。
まずは、ジャック・セリアズを演じたデビット・ボウイ、ロレンスを演じたトム・コンティ、ヨノイ大尉を演じた坂本龍一、ハラ軍曹を演じたビートたけし。うちデビット・ボウイと坂本龍一はミュージシャン。ビートたけしは、コメディアン。トム・コンティのみプロの俳優ですが、ほぼ無名の存在でした。もし、この4人のうち、ひとりでも欠けてしまっていた考えると寒気を感じます。大島渚の選別眼に改めて感嘆せざる得ません。
そして言うまでもなく、サントラも担当した坂本龍一。大島から出演のオファーを受けた際、「サントラも担当すること」を条件にしたそうです。これを受けたのも大島の超ファインプレー。大島がYMOの存在を知っていたかどうかすら怪しいですが、既成概念の破壊を喜びとする彼のアンテナにひっかかったのかも知れません。もしこのサントラがなかったと考えると寒気を通り越して絶望感すら感じます。この映画を語るとき、かなり高い確率でサントラも同時に語られることになります。ここまで、作品とサントラが一体化した作品は、世界的に見ても希有ではないでしょうか。『81/2』とニーノ・ロータ、『カジノ・ロワイヤル』とバート・バカラック、『荒野の用心棒』とエンニオ・モリコーネ、『ダーティ・ハリー』とラロ・シフリン。これらと同等かそれ以上と私は思います。
更に、今作で映画製作に携わった経験は、コメディアン:ビートたけしを映画監督:北野武へ転身するきっかけとなり、後に恐るべき『ソナチネ』【1993年】を生むという”奇跡”にもつながります。
今作の原作の原題は「種を蒔く人」ですが、大島渚こそが”種蒔き人”であることは明々白々ではないでしょうか。
そして、今作で誕生したサントラ作家坂本龍一は以降、恐るべき快進撃をはじめることに。次に紹介する3作は、すべてベルナルド・ベルトルッチ監督作品。ベルトルッチと言えば、ヌーベルバーグの次の世代を代表する監督で、実験的な作品を手がける一方で、重厚な大河ドラマ『1900年』【1972年】やセンセーショナルな描写が話題になった『ラスト・タンゴ・イン・パリ』【1972年】を手がけた監督で、イタリア映画界の大島渚的な監督。
そのベルトルッチが手がけた以下3作品は”オリエント三部作”と呼ばれ、プロデューサーのジェレミー・トーマスは、『戦メリ』のプロデューサーでもあった英国人。その縁で、坂本龍一がサントラに起用されることになります。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『ラストエンペラー』1987年/イタリア=中国映画
【original title : The Last Emperor】
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:ジョン・ローン/ジョアン・チェン/ピーター・オトゥール/イン・ツオ・チェン/ヴィクター・ウォン/坂本龍一
満州国最期の皇帝、愛新覚羅溥儀の波瀾万丈の人生を描いた伝記大河ドラマ。ベルトルッチは『1900年』に続き、大河ドラマで成功を収めます。冷戦下にも関わらず、中国政府が全面的に協力。坂本龍一は、サントラのみならず『戦メリ』に続き、甘粕大尉役で俳優としても出演しております。
今作のサントラは、坂本龍一、中国人のコン・スー、トーキング・ヘッズのデビット・バーンによる共作となっております。但し、以下で紹介するメインテーマなど、主要作品のほとんどは坂本龍一が作曲しました。
youtubeよりメインテーマを。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『シェルタリング・スカイ』1990年/イギリス映画
【original title :The Sheltering Sky 】
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:ジョン・マルコビッチ/デブラ・ウィンガー/キャンベル・スコット/ジル・ベネット/ティモシー・スポール
『シェルタリング・スカイ』は、伝説的な作家ポール・ボウルズ【参照:ウィキペディア ポール・ボウルズの項】の「極地の果て」【1949年出版】の映画化作品。この小説の映画化権は、アメリカの大監督ロバート・アルドリッチが取得しておりましたが、彼の手による映画化は実現せず、ベルトルッチ側が映画化権の譲渡を受ける形で実現することに。
危機的な中年夫婦が、異文化圏の北アフリカを訪問し、決定的な破局を迎えるというあまりにもヘビーな内容の心理劇。坂本龍一による切ないピアノの旋律が印象に残ります。この作品辺りで、サントラ作家坂本龍一のスタイルは決定づけられた印象。それは、哀しげな旋律ではないかと。が、ただ哀しいだけでなく、心地よく耳障りの良い切なさとも。”哀しさ”と”心地よさ”という相反する感情を1曲で表現する希有な作曲家と評価できるのではないかと。
こちらもyoutubeより、メインテーマを。

【左:パンフレット/中央、右:チラシ】
『リトル・ブッダ』1993年/イギリス=フランス映画
【original title :Little Buddha 】
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:アレックス・ウィーゼンダンカー/キアヌ・リーヴス/ブリジット・フォンダ/クリス・アイザック/イン・ルオ・チェン
ブッダの生まれ変わりとされる者が継ぐブータン密教のラマ僧は、9年前に前任者が亡くなって以来、空席のまま。後継者候補は世界中で探され、シアトルに暮らす9歳の少年も候補者に選ばれます。白人少年の目を通して、仏教の神秘性を描き、と同時にブッダの生涯も平行して描きます。西洋人には解りにくい、仏教の教則映画的内容で一種の異文化交流映画。ブッダ役は、中国系アメリカ人で当時は無名だったキアヌ・リーブスが演じます。
今作でも坂本龍一美学が炸裂。壮大なオーケストレーションは圧倒的。サントラのみの評価なら個人的には今作がオリエント三部作の中ではベストではないかと考えております。
youtubeより、少し長いですがエンド・クレジットで流れる壮大な曲を。
サントラ作家坂本龍一の活動は止まる所を知りません。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『侍女の物語』1990年/アメリカ映画
【original title : The Handmaid's Tale】
監督:フォルカー・シュレンドルフ
出演:ナターシャ・リチャードソン/フェイ・ダナウェイ/エイダン・クイン/エリザベス・マクガヴァン/ロバート・デュヴァル
ヴィム・ヴェンダースと並ぶニュージャーマン・シネマの雄、フォルカー・シュレンドルフ作品にもサントラを提供。
youtubeよりテーマ曲を。サントラ版は直リンク禁止ですので、こちらを。
こちらは音声のみですが、1989年のライブ音源とのこと。

【左:パンフレット/中央:プレスシート、右:チラシ】
『ハイヒール』1991年/スペイン映画
【original title :Tacones Lejanos 】
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ビクトリア・アブリル/マリサ・パレデス/ミゲル・ボセ/フェオドール・アトキン
なんとスペイン映画界の異端児ペドロ・アルモドバルにもサントラを提供することに。今作は、1992年に開催される予定のバルセロナ・オリンピックを前に、スペインをPRするためにスペイン政府肝いりで作られた作品で、坂本龍一もその一環で招請されました。
まずは、youtubeより『ハイヒール』のテーマを。
画質音質が悪いですが、バルセロナオリンピックの開会指揮で指揮を執る坂本龍一を。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『嵐が丘』1992年/イギリス映画
【original title :Wuthering Heights 】
監督:ピーター・コズミンスキー
出演:ジュリエット・ビノシュ/レイフ・ファインズ/ジャネット・マクティア/サイモン・シェパード
あの壮大な大悲劇、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』と坂本の旋律。これ以上マッチした組み合わせは考えられません。映画自体の出来は比較的凡庸と言うべきですが、サントラはまたもや傑作。なんなんでしょう、この才能は。
youtubeより、例のごとく哀しくも美しい旋律を持つメインテーマを。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『スネーク・アイズ』1998年/アメリカ映画
【original title : Snake Eyes】
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:ニコラス・ケイジ/ゲーリー・シニーズ/ジョン・ハード/カーラ・グギノ/スタン・ショウ

【左:パンフレット/右:チラシ】
『ファム・ファタール』2002年/アメリカ映画
【original title :FEMME FATALE 】
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:アントニオ・バンデラス/レベッカ・ローミン/ピーター・コヨーテ/エリック・エブアニー
この2作品は、いずれもブライアン・デ・パルマ監督作品。映画技術マニアのデ・パルマと坂本のコラボと聞いたときは胸躍らずにいられませんでしたが、結果は若干微妙なものに。
といいますのも、この時期デ・パルマは何をやってもダメな時期。プラス題材がハリウッド製サスペンス・アクションですから、坂本龍一の”哀しげな旋律”が生きる余地はなかったようです。いつの日か、坂本メロディの生きる題材でもういちどデ・パルマ=坂本の実現を期待したいところです。
一応、youtubeより『スネーク・アイズ』のテーマを。
とはいいつつも、『ファム・ファタール』でデ・パルマと坂本は常軌を逸した冒険を試みます。それは歴史的傑作であるラベルの「ボレロ」への挑戦。タイトルはそのものズバリで”Bolerish”。つまり「ボレロ風」。ボレロ風と言えば、黒澤明=早坂文雄コンビが『羅生門』【1948年】で半世紀前にチャレンジしており、当時ベネチア映画祭で「ボレロ」のパクリではないかと指摘されたそうで、黒澤は「著作権が高くて使えなかったのでパクった」と宣言したとのこと。今作の「ボレロ風」は、この黒澤=早坂作品へのオマージュとも考えられます。
youtubeより”Bolerish”を。
【プレスシート】
【いずれもチラシ】

【いずれもチラシ】
『御法度』1999年/松竹映画
監督:大島渚
出演:松田龍平/浅野忠信/武田真治/ビートたけし/崔洋一
『戦メリ』以来、16年ぶりに実現した大島=坂本作品。作品自体は『戦メリ』同様、またもや賛否両論を巻き起こすことになり、今回は否の度合いが随分高かったような気も。ただ私のような大島信者にとっては傑作以外のなにものでもないのですが。
サントラも『戦メリ』ほどセンセーショナルではありませんが、静かでもの哀しげな坂本メロディは炸裂。現代音楽的、武満徹的な側面もかいま見えます。
youtubeよりメインテーマを。
以上、紹介した以外の作品はとしては、
『子猫物語』【1986年】音が大きいので再生注意!
『王立宇宙軍 オネアミスの翼』【1987年/アニメ映画】
『ワイルド・パームス』【1993年/オリバー・ストーン製作/アメリカTVシリーズ】
『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』【1998年】
『路地へ/中上健次の残したフィルム』【2000年/ドキュメンタリー映画/監督:青山真治】
『アレクセイと泉』【2002年/ドキュメンタリー映画】
『トニー滝谷』【2004年/監督:市川準】
『シルク』【2007年/監督:フランソワ・ジラール】
などがあります。
繰り返しになりますが、坂本龍一の紡ぐメロディには悲しみと美しさが同居しております。「琴線に触れる」という表現がありますが、これは坂本龍一の曲にこそ当てはまる言い回しではないでしょうか。曲を聴けば「坂本龍一らしいなぁ」と感じることになります。旋律で名前が浮かびます。これはもの凄いことではないでしょうか。ニーノ・ロータ、バーナード・ハーマン、エンニオ・モリコーネ、ラロ・シフリンと同列で語るべきサントラ作家ではないか、と私映画パンフレット研究所所長は確信しております。
更に、サントラの分野だけでなく、自身で作曲家/演奏家としても成功し、現在もYMOとしてしばしば我々を楽しましてくれております。
サントラに関してはやり尽くした感があるのか、最近はペースダウンしており、かつてのような情熱は持っていないようにも思えます。ただ、モチベーションの高まるようなオファーがあれば、再び坂本メロディが炸裂する可能性は十分あるように思えます。もしかすると、北野武作品もあり得るのではないかとの妄想も。
ついでと言っては失礼ですが、YMOのメンバー、細野晴臣さんも素晴らしいサントラを発表しております。何の因果か、その作品の主演もビートたけしでした。

『ほしをつぐもの』1990年/松竹富士映画
監督:小水一男
出演:田中邦衛/ビートたけし/足立龍児/脇田麻衣子/小磯奈美
戦争中に疎開先の長野を逃げ出し、漁師の男の案内で東京まで歩いて帰る少年達の姿を描いた青春冒険映画。二度と戻らないあの懐かしい日々を描いた青春映画として手堅くまとまっている良品でした。
メロドラマとしての要素も盛り込まれ、ラストで感動的でファンタジックなシーンが用意されているのですが、そのシーンを支えたのが細野メロディでした。うれしいことに、youtubeこの曲がありました!
【iTunes Store(Japan)】


















私は地震と津波による直接の被害を受けてはいない地域に住んでおりますが、計画停電が施行され、空気中と水道水中の放射能数値が普段より多少上昇している地域に住んでおります。原子力発電所の状態も非常に気になります。もちろん、直接の被害を受けた東北・北関東の方々に比べれば数段安全で普段通りの生活ができておりますので辛いとは思いません。
ただ、より多くの放射能を浴びるのではないかという不安の中で暮らす私も、この試合の決定と発表されたメンバーを見て久しぶりに心が踊りました。見たい!と心から思います。年甲斐もなく早く試合の日になってくれ!とさえ思います。ほぼアジアカップ優勝メンバ?が揃った日本代表が、中村俊輔、小野伸二、楢崎正剛、川口能活、W杯南アフリカ大会で日本のセンターを死守した中澤トゥーリオ、更には、小笠原、中村憲剛、大久保嘉人、佐藤寿人、そして何よりも三浦知良、キングカズが参加するJリーグ選抜チームと対戦してくれます。
勝敗を考えると胸が引き裂かれるような気もします。どっちも負けてほしくない。でも、本田のゴールも見たいし、カズのゴールも見たい。長友のオーバーラップからのセンタリングも見たいし、前田のゴールも見たい。が、楢崎のセーブもみたい。俊輔、小野からカズ選手へのスルーパスなんてあるんでしょうか。考えただけでも鳥肌もの。どちらのチームがゴールしても、喜びと悲しみを同時に感じる予感が・・・。
ただただ楽しみです。夢のような90分を過ごせそうです。日本サッカー発展の歴史と輝ける未来が同時に見られる試合になることを期待できそうです。試合の間は、放射能のことも忘れられる気がします。東北地方のサッカーファンの方々も、この試合を見ることができ、一瞬でも心が和むことを祈りつつ。
記者会見でのカズ選手【Yahoo!経由スポーツナビの記事】
両チーム選出メンバー一覧【スポーツナビ】
カズ選手インタビュー【Yahoo!経由SOCCER KING】
小笠原・新井場選手コメント【Yahoo!経由SOCCER KING】
長友選手コメント【Yahoo!経由読売新聞】
長谷部選手コメント【Yahoo!経由毎日新聞】
ザッケローニ監督のコメント【Yahoo!経由毎日新聞】
「日本は私の家であり、『自分は日本人だ』と感じている。」
ザック「練習よりも大切」募金活動を大幅延長【izaの記事】
正直、泣けてきました。年甲斐もなくウルっときました。
ストイコビッチ監督のコメント【Yahoo!経由スポニチ】

日本サッカー協会が義援金を募集し、日本赤十字社に全額寄付されます。
ここから本題を。
これまで、「サントラ至上主義」では、ハリウッドで活躍したオーケストレーション型のサントラ作家ばかり紹介してきました。サントラ史に名を残した作曲家を古い順に追っていくつもりでおりましたが、予定を変更し、今回は、日本のサントラ作家に焦点を当てます。
日本映画界には、古くより素晴らしいサントラ作家がいたのはご存じの通りです。溝口健二、黒澤明に楽曲を提供した早坂文雄氏。ジョン・ヒューストンの『天地創造』【1966年】を担当した黛敏郎氏。斉藤高順、武満徹、枚挙にいとまがありません。が、今回は比較的近年に活躍し、現在も活躍中の坂本龍一が担当したサントラを紹介いたします。
坂本龍一は、他の偉大なサントラ作家同様、当初よりサントラ作家を志向していた訳ではありません。1976年に東京芸大の修士号を取得したのち、スタジオ・ミュージシャンとして活動。その過程で出会った細野晴臣、高橋幸広とYMO【イエロー・マジック・オーケストラ】を結成。ほぼ同時期にソロ・アーティストとしても活動を始めます。
YMOは折からのテクノ・ブームに乗り大成功を収めます。アジアのバンドとして初めて欧米でも一定の評価を獲得するに至ります。テクノ・ポップ史/エレクトロ・ポップ史の中ではレジェンドとしてその名を刻んでいるのは言うまでもありません。ここで、いくつかYMOの代表曲を。
”東風【Tong Poo】"PVをyoutubeより。
”Solid State Survivor " 武道館1980年を。
”Rydeen”のPV。
”Technopolis”のPV。
私映パン研所長にとって、何億回聴いても飽きない永遠のグルーヴ”Computer Games”のPV。
なんでしょう、この充実感は。上掲5曲はYMOの全貌のごく一部でしかありません。Youtubeには貴重なライブ映像や音源が多数アップされております。興味のある方は是非チェックしてみてください。ちなみに今年のFUJI ROCK FESTIVALにも出演が決定しているとのことです。
上記のビデオを一本でも聴いて頂ければ、彼らがサントラにうってつけの音楽性を持っていることが解るかと。音楽の重要度が高い優れた作品があれば、彼らの資質は発揮される予感に満ちあふれております。偉大なサントラ作家の多くが、他ジャンルの作曲家/編曲家/演奏家としての活動と同時並行で活動していたか、転向してきたこと考えれば、彼らほどの能力の持ち主であればサントラ作家として仕事をするのは宿命とさえ思えます。
そして、坂本龍一にその機会がやってきます。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『戦場のメリークリスマス』1983年/イギリス=日本映画
【original title : Meryy Cristmas Mr.Lawrence】
監督:大島渚
出演:デビット・ボウイ/ビートたけし/坂本龍一/トム・コンティ/ジャック・トンプソン
説明不要のセンセーショナル作。私映画パンフレット研究所所長にとっては、ありとあらゆる面で刺激を受け続けている作品です。一体全体、何度この作品を観たでしょうか。何度このサントラを聴いたでしょうか。
私にとって初めて買ったサントラレコードがこの作品でした。セコイ自慢をするようで申し訳ないのですが、敢えて言わせて頂きたい。まずLPレコードを買いました。そして、新宿のシスコという輸入レコード店で、デビット・ボウイが磔されている場面をデザイン化したジャケット違いの輸入盤を発見し、問答無用で購入しました。私にとって、初めてのジャケ買いでした。そして、”Coda"というソロ・ピアノバージョンのカセットテープも購入しました。もちろん、CD化されても買いました。輸入盤CDも買いました。レーザーディスクも買いました。DVD化された際も買いました。ブルーレイ化されるならもちろん買います。原作本ローレンス・ヴァン・デル・ポストによる原作本「種を蒔く人」も読みました。撮影秘話を集めた本も買いました。テーマ曲のオルゴールを偶然見つけた時も買いました。要するに私は”戦メリ”バカということに。
作品としても私の映画鑑賞歴の中では最上位に来る内容ですが、今回はあくまでも”サントラ至上主義”ですので内容には触れません。
サントラについては説明不要かと。坂本龍一は琴線に触れるメロディを紡ぎます。が、涙を誘うような下世話なメロディではありません。少しづつ心に染み入るような・・・なんて言葉で語るよりもyoutubeより。
伝説的なラストシーンから、テーマ曲とエンドロール丸ごと9分半です。
全編をご覧になっていない方にはいまひとつ伝わらないとも思いますが偉大なシーンです。もうすぐ訪れる過酷な末路を待つハラ軍曹の元をかつて敵ながらも奇妙な友情を結んだロレンスが訪れます。もちろん、会話ははずみません。床に座るロレンス。彼もまた居心地の悪さを感じているのでしょう。が、哀れなハラを思うと別れの挨拶を切り出せずに、しばらくの間、あまりにも痛々しい会話を続けざるを得ません。別れを躊躇する素振りを見せます。私はこの天井からのショットを、世界映画史上最も哀しい躊躇シーンと私は孤独に認定している次第です。そして、遂に別れの時。「ロレンスっ!」とかつてのようにハラの怒鳴り声が響きます。そして、ラストカット。この最後のカットは、世界映画史上に燦然と輝くクロースアップと私は孤独に認定しているのは言うまでもありません。
もちろん、この作品の内容とラストについては多くの日本人は感情を揺さぶられたと思われますが、世界的には賛否両論を巻き起こしました。否定的な意見も多数あったとのこと。日本は悪であり、戦争犯罪者は容赦なく裁かれるべき、とする考えからするとこの内容は許せない、ということになるのでしょう。大島渚の意図を汲めば、そのような評価は表面的で浅薄と私は思いますが。
大島がデビット・ボウイ演じるセリアズの役を最初にロバート・レッドフォードにオファーしたのは有名なエピソードです。脚本をあらかじめ渡し面会に向かった大島に対しレッドフォードの答えは「ノー!」でした。「あなたのこれまでの仕事は大変尊敬しているが、この作品に出ることはできない。もし、出たらハリウッドで仕事ができなくなる」との理由でした。
そして次にオファーしたのがデビット・ボウイ。その時点で資金調達の目処が立っていないこと説明する大島に、デビット・ボウイは「この作品に出られるなら何年でも待つ!」とオファーを快諾したそうです。結果的にですが、このデビット・ボウイの起用が恐るべき成果を生んだことはご存じの通りです。彼の妖しげな魅力が、今作の”もうひとつのテーマ”を豊饒なものにしたことは言うまでもありません。レッドフォードだったらと思うと寒気がするほど。【ちなみに私はストレートですので。念のため。】
さらに余談ですが、先日、日本代表の長友選手がメルカトーレと呼ばれるサッカー選手の移籍期間ギリギリで、チェゼーナというチームからインテル・ミラノへと移籍しました。この移籍期間は1月31日で閉まるのですが、長友選手の移籍が成立したのは期間終了の数分前というタイミングでした。私はネットでこの模様を観ていたのですが、駆け込み移籍が成立した瞬間、この戦メリのテーマ曲がイタリアのTV局の番組で流れました。
少し話題が逸れましたが、サントラに話を戻します。今作にはもうひとつ忘れ得ぬ曲があります。”Sowing the Seed”をYoutubeより。
やはりご覧になってない方には訳がわからないシーンかもしません。が、もしご覧になれば、このシーンとこの曲を忘れることができなくなるはず。それほど衝撃的で忘れ得ぬシーンです。言うまでもなく、映画史上最も美しい”英国人捕虜が命令を無視して歩くシーン”です。この瞬間、登場人物たちの間にあった微妙な均衡が崩壊し、全てが変わり、多くの者達は破滅への道を辿ることに。そして怒濤のラストに向かってドラマは急速に展開していきます。
Youtubeのコメント欄をご覧になると、この作品の内容、扱ったテーマがいかに世界中で賛否の渦を巻き起こして現在に至っているか解ると思います。製作より30年近くが経過した現在でも頻繁に世界中からコメントが書き込まれております。
また、先ほど紹介したテーマ曲"Merry Christmas Mr.Lawrence"には、歌付バージョンも存在します。タイトルは"Forbidden Colors"。もちろん日本語訳すれば「禁色」。言うまでもなく、三島由紀夫の小説と同タイトル。英国のJAPANというバンドのボーカリスト、デビット・シルビアンがヴォーカルを担当しました。こちらもYoutubeより。
しばしば映画配給会社が宣伝文句として”奇跡の作品”ですとか”奇跡の共演”などと安っぽい宣伝文句を用いることがあります。思慮深い映画ファンはもはやこのような文言に騙されることはありませんが。この『戦場のメリークリスマス』という作品は、その”奇跡”という言葉を使う以外、他の表現が見あたりません。
まずは、ジャック・セリアズを演じたデビット・ボウイ、ロレンスを演じたトム・コンティ、ヨノイ大尉を演じた坂本龍一、ハラ軍曹を演じたビートたけし。うちデビット・ボウイと坂本龍一はミュージシャン。ビートたけしは、コメディアン。トム・コンティのみプロの俳優ですが、ほぼ無名の存在でした。もし、この4人のうち、ひとりでも欠けてしまっていた考えると寒気を感じます。大島渚の選別眼に改めて感嘆せざる得ません。
そして言うまでもなく、サントラも担当した坂本龍一。大島から出演のオファーを受けた際、「サントラも担当すること」を条件にしたそうです。これを受けたのも大島の超ファインプレー。大島がYMOの存在を知っていたかどうかすら怪しいですが、既成概念の破壊を喜びとする彼のアンテナにひっかかったのかも知れません。もしこのサントラがなかったと考えると寒気を通り越して絶望感すら感じます。この映画を語るとき、かなり高い確率でサントラも同時に語られることになります。ここまで、作品とサントラが一体化した作品は、世界的に見ても希有ではないでしょうか。『81/2』とニーノ・ロータ、『カジノ・ロワイヤル』とバート・バカラック、『荒野の用心棒』とエンニオ・モリコーネ、『ダーティ・ハリー』とラロ・シフリン。これらと同等かそれ以上と私は思います。
更に、今作で映画製作に携わった経験は、コメディアン:ビートたけしを映画監督:北野武へ転身するきっかけとなり、後に恐るべき『ソナチネ』【1993年】を生むという”奇跡”にもつながります。
今作の原作の原題は「種を蒔く人」ですが、大島渚こそが”種蒔き人”であることは明々白々ではないでしょうか。
そして、今作で誕生したサントラ作家坂本龍一は以降、恐るべき快進撃をはじめることに。次に紹介する3作は、すべてベルナルド・ベルトルッチ監督作品。ベルトルッチと言えば、ヌーベルバーグの次の世代を代表する監督で、実験的な作品を手がける一方で、重厚な大河ドラマ『1900年』【1972年】やセンセーショナルな描写が話題になった『ラスト・タンゴ・イン・パリ』【1972年】を手がけた監督で、イタリア映画界の大島渚的な監督。
そのベルトルッチが手がけた以下3作品は”オリエント三部作”と呼ばれ、プロデューサーのジェレミー・トーマスは、『戦メリ』のプロデューサーでもあった英国人。その縁で、坂本龍一がサントラに起用されることになります。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『ラストエンペラー』1987年/イタリア=中国映画
【original title : The Last Emperor】
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:ジョン・ローン/ジョアン・チェン/ピーター・オトゥール/イン・ツオ・チェン/ヴィクター・ウォン/坂本龍一
満州国最期の皇帝、愛新覚羅溥儀の波瀾万丈の人生を描いた伝記大河ドラマ。ベルトルッチは『1900年』に続き、大河ドラマで成功を収めます。冷戦下にも関わらず、中国政府が全面的に協力。坂本龍一は、サントラのみならず『戦メリ』に続き、甘粕大尉役で俳優としても出演しております。
今作のサントラは、坂本龍一、中国人のコン・スー、トーキング・ヘッズのデビット・バーンによる共作となっております。但し、以下で紹介するメインテーマなど、主要作品のほとんどは坂本龍一が作曲しました。
youtubeよりメインテーマを。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『シェルタリング・スカイ』1990年/イギリス映画
【original title :The Sheltering Sky 】
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:ジョン・マルコビッチ/デブラ・ウィンガー/キャンベル・スコット/ジル・ベネット/ティモシー・スポール
『シェルタリング・スカイ』は、伝説的な作家ポール・ボウルズ【参照:ウィキペディア ポール・ボウルズの項】の「極地の果て」【1949年出版】の映画化作品。この小説の映画化権は、アメリカの大監督ロバート・アルドリッチが取得しておりましたが、彼の手による映画化は実現せず、ベルトルッチ側が映画化権の譲渡を受ける形で実現することに。
危機的な中年夫婦が、異文化圏の北アフリカを訪問し、決定的な破局を迎えるというあまりにもヘビーな内容の心理劇。坂本龍一による切ないピアノの旋律が印象に残ります。この作品辺りで、サントラ作家坂本龍一のスタイルは決定づけられた印象。それは、哀しげな旋律ではないかと。が、ただ哀しいだけでなく、心地よく耳障りの良い切なさとも。”哀しさ”と”心地よさ”という相反する感情を1曲で表現する希有な作曲家と評価できるのではないかと。
こちらもyoutubeより、メインテーマを。

【左:パンフレット/中央、右:チラシ】
『リトル・ブッダ』1993年/イギリス=フランス映画
【original title :Little Buddha 】
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:アレックス・ウィーゼンダンカー/キアヌ・リーヴス/ブリジット・フォンダ/クリス・アイザック/イン・ルオ・チェン
ブッダの生まれ変わりとされる者が継ぐブータン密教のラマ僧は、9年前に前任者が亡くなって以来、空席のまま。後継者候補は世界中で探され、シアトルに暮らす9歳の少年も候補者に選ばれます。白人少年の目を通して、仏教の神秘性を描き、と同時にブッダの生涯も平行して描きます。西洋人には解りにくい、仏教の教則映画的内容で一種の異文化交流映画。ブッダ役は、中国系アメリカ人で当時は無名だったキアヌ・リーブスが演じます。
今作でも坂本龍一美学が炸裂。壮大なオーケストレーションは圧倒的。サントラのみの評価なら個人的には今作がオリエント三部作の中ではベストではないかと考えております。
youtubeより、少し長いですがエンド・クレジットで流れる壮大な曲を。
サントラ作家坂本龍一の活動は止まる所を知りません。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『侍女の物語』1990年/アメリカ映画
【original title : The Handmaid's Tale】
監督:フォルカー・シュレンドルフ
出演:ナターシャ・リチャードソン/フェイ・ダナウェイ/エイダン・クイン/エリザベス・マクガヴァン/ロバート・デュヴァル
ヴィム・ヴェンダースと並ぶニュージャーマン・シネマの雄、フォルカー・シュレンドルフ作品にもサントラを提供。
youtubeよりテーマ曲を。サントラ版は直リンク禁止ですので、こちらを。
こちらは音声のみですが、1989年のライブ音源とのこと。

【左:パンフレット/中央:プレスシート、右:チラシ】
『ハイヒール』1991年/スペイン映画
【original title :Tacones Lejanos 】
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ビクトリア・アブリル/マリサ・パレデス/ミゲル・ボセ/フェオドール・アトキン
なんとスペイン映画界の異端児ペドロ・アルモドバルにもサントラを提供することに。今作は、1992年に開催される予定のバルセロナ・オリンピックを前に、スペインをPRするためにスペイン政府肝いりで作られた作品で、坂本龍一もその一環で招請されました。
まずは、youtubeより『ハイヒール』のテーマを。
画質音質が悪いですが、バルセロナオリンピックの開会指揮で指揮を執る坂本龍一を。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『嵐が丘』1992年/イギリス映画
【original title :Wuthering Heights 】
監督:ピーター・コズミンスキー
出演:ジュリエット・ビノシュ/レイフ・ファインズ/ジャネット・マクティア/サイモン・シェパード
あの壮大な大悲劇、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』と坂本の旋律。これ以上マッチした組み合わせは考えられません。映画自体の出来は比較的凡庸と言うべきですが、サントラはまたもや傑作。なんなんでしょう、この才能は。
youtubeより、例のごとく哀しくも美しい旋律を持つメインテーマを。

【左:パンフレット/右:チラシ】
『スネーク・アイズ』1998年/アメリカ映画
【original title : Snake Eyes】
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:ニコラス・ケイジ/ゲーリー・シニーズ/ジョン・ハード/カーラ・グギノ/スタン・ショウ

【左:パンフレット/右:チラシ】
『ファム・ファタール』2002年/アメリカ映画
【original title :FEMME FATALE 】
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:アントニオ・バンデラス/レベッカ・ローミン/ピーター・コヨーテ/エリック・エブアニー
この2作品は、いずれもブライアン・デ・パルマ監督作品。映画技術マニアのデ・パルマと坂本のコラボと聞いたときは胸躍らずにいられませんでしたが、結果は若干微妙なものに。
といいますのも、この時期デ・パルマは何をやってもダメな時期。プラス題材がハリウッド製サスペンス・アクションですから、坂本龍一の”哀しげな旋律”が生きる余地はなかったようです。いつの日か、坂本メロディの生きる題材でもういちどデ・パルマ=坂本の実現を期待したいところです。
一応、youtubeより『スネーク・アイズ』のテーマを。
とはいいつつも、『ファム・ファタール』でデ・パルマと坂本は常軌を逸した冒険を試みます。それは歴史的傑作であるラベルの「ボレロ」への挑戦。タイトルはそのものズバリで”Bolerish”。つまり「ボレロ風」。ボレロ風と言えば、黒澤明=早坂文雄コンビが『羅生門』【1948年】で半世紀前にチャレンジしており、当時ベネチア映画祭で「ボレロ」のパクリではないかと指摘されたそうで、黒澤は「著作権が高くて使えなかったのでパクった」と宣言したとのこと。今作の「ボレロ風」は、この黒澤=早坂作品へのオマージュとも考えられます。
youtubeより”Bolerish”を。
【プレスシート】
【いずれもチラシ】

【いずれもチラシ】
『御法度』1999年/松竹映画
監督:大島渚
出演:松田龍平/浅野忠信/武田真治/ビートたけし/崔洋一
『戦メリ』以来、16年ぶりに実現した大島=坂本作品。作品自体は『戦メリ』同様、またもや賛否両論を巻き起こすことになり、今回は否の度合いが随分高かったような気も。ただ私のような大島信者にとっては傑作以外のなにものでもないのですが。
サントラも『戦メリ』ほどセンセーショナルではありませんが、静かでもの哀しげな坂本メロディは炸裂。現代音楽的、武満徹的な側面もかいま見えます。
youtubeよりメインテーマを。
以上、紹介した以外の作品はとしては、
『子猫物語』【1986年】音が大きいので再生注意!
『王立宇宙軍 オネアミスの翼』【1987年/アニメ映画】
『ワイルド・パームス』【1993年/オリバー・ストーン製作/アメリカTVシリーズ】
『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』【1998年】
『路地へ/中上健次の残したフィルム』【2000年/ドキュメンタリー映画/監督:青山真治】
『アレクセイと泉』【2002年/ドキュメンタリー映画】
『トニー滝谷』【2004年/監督:市川準】
『シルク』【2007年/監督:フランソワ・ジラール】
などがあります。
繰り返しになりますが、坂本龍一の紡ぐメロディには悲しみと美しさが同居しております。「琴線に触れる」という表現がありますが、これは坂本龍一の曲にこそ当てはまる言い回しではないでしょうか。曲を聴けば「坂本龍一らしいなぁ」と感じることになります。旋律で名前が浮かびます。これはもの凄いことではないでしょうか。ニーノ・ロータ、バーナード・ハーマン、エンニオ・モリコーネ、ラロ・シフリンと同列で語るべきサントラ作家ではないか、と私映画パンフレット研究所所長は確信しております。
更に、サントラの分野だけでなく、自身で作曲家/演奏家としても成功し、現在もYMOとしてしばしば我々を楽しましてくれております。
サントラに関してはやり尽くした感があるのか、最近はペースダウンしており、かつてのような情熱は持っていないようにも思えます。ただ、モチベーションの高まるようなオファーがあれば、再び坂本メロディが炸裂する可能性は十分あるように思えます。もしかすると、北野武作品もあり得るのではないかとの妄想も。
ついでと言っては失礼ですが、YMOのメンバー、細野晴臣さんも素晴らしいサントラを発表しております。何の因果か、その作品の主演もビートたけしでした。

『ほしをつぐもの』1990年/松竹富士映画
監督:小水一男
出演:田中邦衛/ビートたけし/足立龍児/脇田麻衣子/小磯奈美
戦争中に疎開先の長野を逃げ出し、漁師の男の案内で東京まで歩いて帰る少年達の姿を描いた青春冒険映画。二度と戻らないあの懐かしい日々を描いた青春映画として手堅くまとまっている良品でした。
メロドラマとしての要素も盛り込まれ、ラストで感動的でファンタジックなシーンが用意されているのですが、そのシーンを支えたのが細野メロディでした。うれしいことに、youtubeこの曲がありました!
【iTunes Store(Japan)】












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